離婚と年金分割、制度と手続きを7分で解説

離婚 年金分割とは

年金分割の制度は、離婚した場合等、夫婦であった期間の厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を分割できる制度です。

合意分割と3号分割という2種類の制度がありますので、それぞれ見ていきたいと思います。

合意分割と3号分割とは

合意分割は平成19年4月に、3号分割は平成20年4月にできた制度です。

厚生年金の元となった労働者年金保険制度が昭和17年、そして厚生年金保険と名前が変わり、女性にも適用されるようになったのが昭和19年のことなので、新しい制度と言えるでしょう。

では、制度の内容について大まかに説明させて頂きます。

合意分割について

当事者の婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を、原則、離婚した日の翌日から2年以内に手続きを行うことにより、当事者間で分割する制度です。

平成19年4月1日以降に離婚日がある方が対象です。但し分割対象となる厚生年金の記録は婚姻期間全てとなります。

つまり制度ができたのは平成19年4月1日ですが、それ以前の厚生年金の記録についても影響を及ぼすことになります。

合意分割をしないという合意について

合意分割は文字通り、原則当事者の合意に基づき分割の請求をする制度です。

ここで、「合意分割をしないという合意」についても有効であるかどうか気になるところですが、公序良俗に反するなど特段の事情がない限り有効であるという裁判所の判断(平成20年6月16日静岡家庭裁判所浜松支部)もありましたので、やはり当事者の合意が大切だということがわかります。

ただし、そもそも合意がまとまらない場合については、当事者の一方の求めにより裁判所が分割割合を定めることができますので、相手方の合意を得られない場合には、このような手続きも視野に入れておくと良いと思います。

※ 離婚から2年を経過するまでに審判が確定しなかったり、和解や判決が確定しなかった場合には、確定の日から1カ月以内であれば、手続きが可能です。

3号分割について

原則、離婚した日の翌日から2年以内に行わなければならないことは、合意分割と変わりませんが、3号分割は国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により行うことができる制度です。

平成20年5月1日以降に離婚日がある方が対象で、分割の対象となる厚生年金の記録は、婚姻期間中の平成20年4月1日以後の厚生年金記録のみとなります

相手方の合意を要さず請求者が単独で手続きを行えるのが合意分割との大きな違いです。但し相手方が障害厚生年金の受給権者で、分割の対象となる期間が年金額の基礎となっている場合には3号分割請求は認められないので注意が必要です。

※ 離婚等をした場合の前月までの記録が分割の対象となるので、施行は平成20年4月ですが、分割される記録は平成20年5月以降のものとなっています。

合意分割と3号分割の違い

合意分割

●平成19年4月1日以降に離婚した場合等で、分割される対象は婚姻期間中全ての厚生年金記録

●当事者の合意や裁判手続きにより年金分割の割合を定める(按分割合は5割を上限とすることとなっています。)

3号分割

●平成20年5月1日以降に離婚した場合等で、分割される対象は平成20年4月1日以降の婚姻期間中の厚生年金記録

●国民年金3号被保険者期間のある方からの請求による(対象期間の厚生年金保険料納付記録を2分の1ずつに分割します。)

上記が主な制度比較となります。

次は具体的な手続きを見ていきましょう。

離婚の際の年金分割手続き

分割するとどうなるか、確認する方法

年金分割を行うには、「情報通知書の請求手続き」からはじまります。これは年金分割のための情報通知書を受け取るための手続きです。

この手続きは離婚前に1人でも行えます。相手方に知られたくない場合等の状況にも、ある程度対応してもらえます。

 離婚原因が配偶者からのDVによるとき、離婚の目途がたっていなくとも配偶者からDVを受けている、法律婚でなくとも同棲している相手からDVを受けたとき等は、国民年金保険料の特例免除や、年金記録の秘密保持の配慮等の対応もしてもらえますので、最寄りの年金事務所に必ず相談に行ってください。システムへのDV被害登録及び、基礎年金番号の変更も行われることもありますので、非常に重要です。

これには対象期間の標準報酬額の総額、対象期間等が書かれています。

ここでご注意頂きたいのが、これだけでは将来実際に貰える年金の額については不明瞭である点です。

50歳以上の方は忘れずに老齢年金の年金見込額を、障害厚生年金を受給している全ての方は障害厚生年金の見込額を、最寄りの年金事務所で確認しておくことをお勧めします。

極めてレアなケースですが、3号分割をしたものの、結局受け取る年金額が減ってしまったという女性が実際におられました。

3号分割は前述の通り相手の合意も裁判も必要なく、単独で行えるのですが、平成20年4月1日以降の記録のみが対象の為、それまで専業主婦だった期間が長くとも、分割対象期間だけを見るとお互いに、相手を扶養していた期間、相手から扶養されていた期間があり、さらに元妻の方が元夫を扶養していた期間が長く、報酬も高かったため、自分に不利な結果を招いてしまったのです。

そして50歳未満の方については、年金事務所では老齢年金の見込み額をだしてもらえませんので、どうしても知りたい場合は、相手方の年金記録と自分の年金記録を用意して、手計算で算出する必要が出てきます。

これがどういうことかというと、相手方に相手の年金記録を取得する為の委任状を書いてもらう等、協力してもらう必要があるので、年金分割を考えていることを、相手に知られたくないときはどうすることもできません。

もし相手の記録を取得できたとしても、非常に煩雑な計算が必要となり、専門家であっても容易ではない為、残念ながら現実的とは言えません。

お互いの年齢や厚生年金保険の期間・報酬等から、はっきり手続きをした方が得だと断定できないような状況であれば、年金分割については触れないというのも選択肢かと思います。

合意分割の手続き

合意分割の請求は、年金分割を明らかにできる書類、つまり合意内容が書かれた書類が必要になります。

公正証書などがそれにあたり、具体的には下記の書類が該当します。

  1. 年金事務所に備えてある様式に、それぞれが年金分割すること及び按分割合について合意している旨を記入し、署名したもの
  2. 公正証書の謄本
  3. 公証人の認証を受けた私署証書

話し合いによる合意に至らない場合には、一方が家庭裁判所への審判または調停の申立てを行うことで按分割合を定める事ができます。

この場合には下記の書類を用意することとなります。

  1. 審判(判決)の場合は、審判(判決)書の謄本等
  2. 調停(和解)の場合は、調停(和解)調書の謄本等

これらの書類とその他戸籍謄本等の必要添付書類とともに、標準報酬改定請求書を年金事務所に提出することにより、合意分割の手続きを行うこととなります

3号分割の手続き

3号分割のみを行う場合は、公正証書の謄本や審判書の謄本等の年金分割を明らかにする書類は不要です。

提出する書類は標準報酬改定請求書と合意分割と同じ書類なのですが、相手方の合意が不要ですので、添付書類もその分減るということです。

原則、離婚後2年以内であればいつでも可能ですが、面倒だからといって後回しにして忘れてしまうよりも、はやめに手続きしてしまった方が良いでしょう。

まとめ

ここまで年金分割について、ざっとご説明させて頂きましたが、如何でしたでしょうか?

年金制度はその制度の目的から、事実婚であっても遺族年金の請求や年金分割が認められる場合もあり、専門家への相談が比較的多い分野であると思います。

ただ、子どもが居る場合には親権や養育費のことや離婚原因次第では慰謝料のこと、その他財産分与などと話し合う過程で協議離婚の際は比較的、よくわからずに決めてしまわれる方も比較的多いかとおもいます。

しっかりと制度を理解して話し合うことが大切です。