遺言書に書けば何でも有効になるか?公正証書と自筆証書の違いpart3

みなさまいつもありがとうござます。
公正証書作成の大阪吹田の江坂みらい法務事務所の信本です。
さて公正証書と自筆証書の遺言で遺言でできる事に違いはあるのか?という事で始めましたこのシリーズ。
本日は、遺言書に書けば何でも有効になるのかというテーマの第三回目です。
前回の記事
遺言書に書けば何でも有効になるか?公正証書と自筆証書の違いpart2

公正証書遺言と自筆証書の違いシリーズ

遺留分減殺方法の指定(民法1034条ただし書)

遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

遺留分減殺請求について考えるためには、まず遺留分についてお話しましょう。
遺留分とは民法に定められている相続に関する権利です。
簡単にいいますと、法定相続人が兄弟姉妹以外の場合(例えば配偶者や子、父母)にその法定相続人に保障されている最低限の相続の取り分です。
亡くなったかたが遺言書で自分の財産を愛人に全て遺贈すると残していた場合、その通りにされては残された配偶者や子供が路頭に迷う恐れがあります。
そんなことにならないように民法に決められた割合で最低限の取り分遺留分が決められています。
そして遺留分の権利を侵害している者、上記の場合は愛人に遺留分の分の遺産を渡してくれと請求する事が遺留分減殺請求です。
通常は1034条のように目的の価額の割合に応じて減殺されます。


例 相続財産3000万円 愛人Aに2000万円の遺贈、愛人Bに1000万円に遺贈、法定相続人は配偶者のみこれを遺留分減殺請求する場合愛人A,Bに対して減殺請求できるのは?
まず配偶者の遺留分額は3000万円×2分の一で1500万円(この配偶者は1500万円を愛人から取り戻せます)
愛人Aからは愛人Aは総相続財産の3分の2を遺贈で受けているので遺留分1500万円の3分の2である1000万円を取り戻せます。
同じ考え方でBからは500万円取り戻せます。


これが目的の価額の割合に応じての意味です。
これを例えば愛人Aから全て減殺するようになど、遺言に記しておくことで被相続人が減殺の方法定めることができるのです。

例文
遺言者は、遺留分の減殺は、まず第○条により○○に相続させる財産からすべきものと定める。

一般財団法人の設立・財産の拠出(一般法人法152条2項等

第152条
1一般財団法人を設立するには、設立者(設立者が二人以上あるときは、その全員)が定款を作成し、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
2設立者は、遺言で、次条第1項各号に掲げる事項及び第154条に規定する事項を定めて一般財団法人を設立する意思を表示することができる。この場合においては、遺3言執行者は、当該遺言の効力が生じた後、遅滞なく、当該遺言で定めた事項を記載した定款を作成し、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
第10条第2項の規定は、前二項の定款について準用する。


一般財団法人とは、財産に法人格を与えたものです。
300万円以上の財産の拠出で設立でき、その運用益で事業を行います。
遺言により相続財産を拠出する形で設立することが可能です。
あまりなじみがないかもしれませんが節税やその他の効果を狙って設立される場合があります。

生命保険受取人の変更(保険法44条1項)

第四十四条 保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。

加入している生命保険などの受取人を遺言書によって変更することが可能です。
法律では遺言としか書かれていませんが、多くの保険会社では公正証書遺言によってのみ変更が可能な様です。

例文
遺言者は平成○○年○月○日にA生命保険相互会社との間で締結した証券番号○○○○の生命保険契約による死亡保険金の受取人を妻乙(生年月日)から長男丙(生年月日)に変更する。

遺言書で出来ることシリーズ折り返し完了

このシリーズもようやく半分が終わりました。
いまさらですがこの法律で定められた遺言でできる事を遺言事項といいます。
このほかにも付言事項という言葉もあります。
付言事項はなぜこういう遺言を書いたかなどの気持ち等を記たりします。
この部分は私たち守秘義務のある専門家にも知られたくないという場合には別途お手紙をあずかったりします。
法的効力は持ちませんが大事な部分ですね。

最後までおよみいただきありがとうございました。