相続で無効にならない書類、5分で分かる念書の効力、遺言の力

相続で必要になる書類とは

相続で必要になる書類は色々あります。
金融機関や法務局などの相続手続きの際に提出を求められる印鑑証明書や戸籍、原戸籍、除籍、住民票などの公的な書類から、故人が残していた遺言書など相続時には普段なじみのない、たくさんの書類と接することになります。
そこで気になるのは、相続に関して効果があるのかどうか分かりにくい書面、念書や覚書や一筆と言われているものです。
結論としては、遺言書という民法の様式を満たしていない念書や覚書は遺言書としては機能しませんし、相続を放棄する旨の一筆や念書も法的に言えば無効です。
ここでは、相続の際に必要になる書類を少し詳しく解説します。

自分で作る書類と取り寄せる書類

相続の際に必要になる書類の中には自分で作成する必要のある書類と市役所などの公的な機関から取得する必要のある書類に分ける事ができます。

公的機関で取得する書類

住民票
必要な方の、住民登録のしてある市区町村役場で取得します。その人の住所地を証明したり本籍地をはっきり覚えていない時などに本籍地記載有の住民票を取得し調べたりします。
戸籍・除籍・原戸籍の謄本
これらの書類は本籍地の市区町村役場で取得することができます。住所地では取得できません。戸籍の謄本は戸籍に記載している事項の全部を同一様式で転写したもので、本籍地や出生・死亡・父、母などの続柄が記載されています。相続時にはこれらを確認して相続人が誰であり法定相続分がどれくらいあるかなどを確認します。またすでに戸籍に記載されている者がいなくなった場合は除籍という書類になります。
印鑑証明書
押印している印鑑が実印かどうかを証明します。相続手続きを行う事になる法務局や金融機関、また公正証書遺言を作成する際に公証役場などに提出し、本人確認にも使われます。住所地の市区町村役場で印鑑登録という実印を作る手続きを行っておくと取得することができます。
固定資産税の評価証明書
固定資産税の評価証明書は、必要な人の住所地の市区町村で取得することができます。その人が所有している不動産に関して地番や家屋番号、評価額が記載されています、相続登記の際や遺言書の作成の際に確認します。

基本は民法に、自分で作る書類

相続に必要になる書類の中には自分で作成する必要のある書類もあります。
自筆証書や公正証書などの遺言書や遺産分割協議書などがそれにあたり、市役所などで入手するものとは違い、自分で作成したり自分で公証役場へ依頼したりして作成します。
遺言書に関しては法的に有効になる要件や事項が民法に細かく決められています。
遺産分割協議書に関しては、様式に関しては民法に定められてはいませんが遺産分割協議に関しては民法に定められています。

遺言書に関して

主な遺言書の種類、自筆証書遺言・公正証書遺言、一般的に多く利用されている遺言はこのどちらかです。
自筆証書遺言は自分で作る遺言でとても手軽に費用も掛からず作成できますが、この遺言を用いて相続手続きを行う際に家庭裁判所の検認という手続きを受けなくてはいけません。検認を受けておかなければ金融機関や法務局では、使う事ができません。
一方公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する公文書なの証明力や安定性に優れ、法的に無効になる可能性も低くそのため家庭裁判所による検認手続きを経ることなくそのまますぐに相続手続きに利用することができます。

参考条文 自筆証書遺言の作り方

1自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

参考条文 遺産分割協議について

1共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
2遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
3前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

この条文を基に協議した結果決定した遺産の分け方を記載した文書が遺産分割協議書になります。

どこにいけばいいの?取り寄せる書類

ここで一度書類の入手先をまとめておきましょう。

本籍地の市区町村役場
戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍
住所地の市区町村役場
住民票・住民票の除票・固定資産税の評価証明書・印鑑証明書
自分で作成
遺言書・遺産分割協議書

無効にならない書類作り、無効になるとどうなるの

法律上の無効という言葉と、ただ「使えない」という意味の無効は少しニュアンス違うのですが、自分で作成する書類である遺言書や遺産分割協議書が無効なり使えなかった場合はどうなるのかと言いますと、まず遺言書の場合、それを用いて相続手続きを行う事が出来なくなります。
相続手続きとは、実際に故人の金融口座を解約したり、不動産の名義変更などを行う手続きの事で、有効な遺言書があれば遺言書を使って遺言の通りに相続手続きを行う事ができますが、遺言書が無効なものである場合には、遺言書が無い場合と同じ手続きを行う事になります。
つまり遺産分割協議を行って遺産分割協議書を作成するなどする必要があります。

法律が書き方を決めている場合、自筆証書の遺言書

自筆証書の遺言書は前述の通り、全文自筆(自分で手書き)、証明と押印、日付を書く事と法律で要件が決まっています。
この要件が守れていない、たとえばPCで作成したりしたものは無効になってしまいます。

手続き機関が定めている有効無効、遺産分割協議書、遺言書

法律とは別に金融機関や法務局で手続きの際に、使えないという場合もあります。
例えば法務局での相続登記の際には、地番や家屋番号で不動産を特定するのですが、遺産分割協議書や遺言書に住所で不動産が記載されているような場合です。
遺産分割協議書であれば作り直すことも可能ですが(それでも法定相続人全員の署名や押印などはとても大変です)遺言書は作り直しができません、この場合その住所地と登記したい不動産の地番や家屋番号を地図などの添付書類で紐付できれば登記することができる可能性はありますが、なかなか一苦労です、それぞれ作成時には法的用件だけでなく手続き的な要件にも注意して作成しましょう。

当事者間の約束、念書は有効なのか

念書や覚書が相続時有効かどうかという点についてですが、法律が要件を決めている遺言書としてはまず使う事ができません。
たとえば子どもと親がいずれ親が死亡したら不動産は子どもAに渡すという念書を交わしていても遺言書としては機能しません。(念書として作成されたこの書類がたまたま自筆証書遺言の用件を満たしているなどすれば使用できる可能性はあります。)

これが死因贈与契約などとして有効になるかどうかは、その正面によるところかもしれませんが、遺言としては使えません。

相続の放棄に関しても同じで、相続人の一人から「相続しません」という旨の念書を取っていたとしても、重要なのは相続が発生したその時のその相続人の意思になりますので、その時に念書をとっていた相続人がやはり相続すると決めたとき、そちらが優先しますし、相続しないという事と法律上の相続放棄は別物で、相続放棄は、相続発生後に家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。

有効?無効?相続と口約束

通常の契約であれば、意思が合致した時点で契約が成立するとされていて口約束であっても契約となります。
たとえば贈与であればもらう側のもらうという意思とあげる側の上げるという意思が合致した時点で贈与は成立し贈与契約書などがないと契約が成立しない訳ではありません。
相続に関してはどうでしょうか、たとえば親が自分が死んだらこの家はお前にあげると言っていたけど遺言書などは何もない場合です。
遺言書が無い場合の相続において特定の相続人が不動産を単独で相続するには他の法定相続人全員の同意が必要になります。
親がそう言っていたから、私にくださいと申し出て、他の相続人がOKであればその通りになりますが、そうではない場合はすべての相続人で遺産分割協議を行い、遺産の分配を話し合うことになります。

まとめ、相続と書類の注意点3つ

相続の発生前の準備段階においても、相続発生後の手続きの際にも普段なじみの無いたくさんの書類と接する事になります。
その見方も複雑なものもありますし入手するにも大変ですが、ひとつひとつ着実揃えていきましょう。「○○を証明するためのこの書類」という意識と相続の基礎知識とともにまとめて揃えて行けば分かりやすくまとめることができます。

相続について必要あるときは念書や覚書よりも法的に有効となる遺言書などを活用しましょう。